
フィードバックという福利厚生
メンバーの成長機会への投資として、トラックレコードは社員への福利厚生と位置づけるつもりでフィードバックに取り組んでいます。半期ごとの長文フィードバック、日々の称賛、年次の表彰会まで、その考え方が組織のさまざまな仕組みに反映されています。
フィードバックを福利厚生として捉える
トラックレコードのサービスの1つの「Colla」はSlack上で「キャンディ」を送り感謝を伝える、というのがメイン機能の1つです。 Collaのサービスが体現するように、「フィードバックは福利厚生のひとつ」という考え方はトラックレコードの根幹にあるものです。
組織で働くことを選んだメンバーが期待しているのは、ひとりでは得られない成長機会です。給与や賞与と同じくらい、自分の活躍や次に伸ばすべき点が丁寧に言語化されて返ってくることそのものに価値がある —— トラックレコードはフィードバックをそう捉えています。
この姿勢の原点は、トラックレコードの共同代表・芹川が前職で見てきた光景にあります。マネージャーが評価期間ごとに、寝る間を惜しんで詳細なフィードバックを返す文化が当たり前のように根づいていた環境。そこから「メンバーへのフィードバックは、マネージャーの当然の責務である」という価値観が形成されています。
また、トラックレコードのカルチャーコードのひとつ「Coachable」は、フィードバックを真摯に受け止め、自らの成長に変換できる資質を意味します。採用時にも重視しているこの資質に応えるためにも、組織の側がフィードバックに全力で向き合うことが前提になります。

半期ごとのフィードバック —— 真剣に時間をかける
トラックレコードでは、半期ごとの評価とセットでメンバー一人ひとりに対する詳細なフィードバックを実施しています。芹川が1サイクルで書くフィードバックは、メンバー1人あたり平均で3000文字前後。A4用紙にして2〜3枚分のボリュームを、半期ごとに2週間ほどかけて書き上げます。対象者は10人を超え、半期ごとに数万文字のフィードバックを書くことになります。
長文のフィードバックを実効性のあるものにするため、運用上いくつかの工夫をしています。
事実で裏付ける。 「顧客の要望を引き出すのがうまくなった」では伝わりません。「A社の商談で◯◯という発言を引き出し、それが追加受注につながった」と、具体的な事実とセットで伝えることで、初めて受け手が次の行動に活かせる情報になります。
このとき、Collaのキャンディ機能(後述)を通じて普段から具体的なエピソードを蓄積しておくことで、直近の印象に左右されることなく、評価期間全体を通じた振り返りが可能となっています。
ポジティブを7割、改善点を3割。 改善点ばかりのフィードバックは、相手の意欲を削いでしまいます。変化を促すには、まず相手の活躍を正しく認め、その上で次に伸ばすべき点を伝える比率が重要です。
「ポジティブ7割」と言いつつも、実際は個々人に合わせて割合はチューニングしています。人によっては「褒めた方が伸びる」タイプもいれば、「改善点を指摘されたほうが燃える」タイプもいるので、最近はむしろどちらの方がいいか本人に聞きながら調整しています。それでも、「ポジティブ9割」や「ネガティブ9割」にならないようには気をつけています。
事前に期待を伝える。 改善点の指摘は、双方が期待値を共有しているからこそ意味を持ちます。期待のすり合わせがない状態での指摘は「揚げ足とり」に聞こえてしまうため、日常的に期待を伝え合うことを大事にしています。
少なくとも一晩寝かす。 書いた直後のフィードバックは熱が入りすぎていることが多いため、翌日以降に冷静に読み返し、推敲してから渡します。
これらに共通するのは、フィードバックを「相手への贈り物」として届けるという姿勢です。相手にとって最も建設的に受け止めやすい形を真剣に考える時間の投資に、ショートカットはありません。
日常の称賛 —— CollaのCandy
半期ごとのフィードバックを支えているのが、日々のメンバー間で交わされる感謝と称賛の積み重ねです。トラックレコードでは、自社サービスであるSlackアプリ「Colla」のCandy機能を活用し、メンバー同士が気軽にお礼を送り合える環境を作っています。
Candyは、感謝の気持ちをカルチャーコード・行動規範に紐づけて贈れる仕組みです。「この前のレビュー、すごく助かった」「あのときの提案、◯◯を体現していた」といったやり取りが、日常的にSlack上を行き交います。2025年の1年間で社内をやり取りされたCandyの数は2,012個に上ります。
毎月初には、Collaが前月のCandyを自動で集計し、もっとも感謝を受け取ったメンバー、もっとも感謝を贈ったメンバー、カルチャーコード別の最多獲得者をレポートしてくれます。半期評価のタイミングでは、これらの記録が「日常の活躍の言語化された蓄積」として、フィードバックの解像度を引き上げる役割を果たします。
直近の印象だけに引っ張られず、半期を通したメンバーの活躍を公平に振り返れる —— Candyはそのためのインフラとして機能しています。

年次のバリュー表彰会
2025年12月には、1年を締めくくる「バリュー表彰会」を初めて開催しました。1年を通してカルチャーコード・行動規範を最も体現していたメンバーを、社員投票で選んで表彰する企画です。
投票にはCollaのアンケート機能を活用し、「誰が、どのカルチャーコード・行動規範に最もふさわしいか」をメンバー全員が記入します。投票の場は、それぞれが1年を振り返って「あの人、こんなふうに頑張っていたな」と思い出す時間にもなりました。
集計結果は表彰会で発表され、ノミネートされたエピソードと、最多得票者への贈呈が行われます。経営から社員への一方通行のフィードバックではなく、社員同士のフィードバックの総決算として位置づけている取り組みです。

仕組みではなく、文化として
フィードバックを福利厚生として位置づけるという発想は、特別な制度や評価ツールを揃えれば実現するものではありません。マネージャーが時間と気持ちを真剣に注ぎ込むこと、メンバー同士が日常的に感謝と称賛を交わすこと、その積み重ねが組織のフィードバック文化を形作っています。
「仕事の喜びを最大化する」というミッションを掲げる以上、ひとりひとりが自分の仕事を意味あるものとして実感し、次の一歩を見つけられる状態であってほしい。フィードバックは、そのための最も確かな投資だと考えています。